ひどいヤツだよアンタは(実話

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今日はドキュメンタリーな感じで近況を書いてみよう。


少し前の話になる。

自分が中途で今の会社に入ったころ、それより2~3週間くらい早く入社してた男の子がいた。


名前を仮にOくんとしよう。


Oくんの年齢は27~28歳くらい。
血液型は確かA型。
体は華奢で細い銀縁のメガネをかけてた。

机にズゴックのフィギュアが飾ってあった。
しゃべり方も少し気を遣いすぎなところがあった。

こういうと少しオタ臭が強調されてる感があるが、ここで少しOくんを擁護(?)するようなことも書いてみる。


これはSEとかプログラマに限ったことではないけど、専門的な職人系の仕事をしている人というのは何かしら常人のそれとは違う人が多い。

端的に言うと変人が多い。

そして変人ほどいい仕事をする。
その逆にまともな人、常識人ほど大した仕事ができない。

やはり何かを得るためには何かを犠牲にしなくてはならないのか。
それとも何かを犠牲にしたが故に得たものなのか。
あるいは最初からどこか人と違うが故に変人として特化していったのか。


ここで注意しなくてはならないのが、
オタ臭=できる人
なのではなくて、
できる人はオタ臭のする人が多いということだ。



…うん、話がそれた。



さてOくんの日常的な主な仕事はテンプレートの作成作業。
テンプレート作成とはWebページの見た目を作ったり整えていったりする仕事。


俺からみたOくんは、そこそこまじめな、そこそこ仕事はできる子。
そしてややポカが多い感じの子であった。

だが少なくとも一緒に働いている限りでは使えない子とは思わなかった。
歳相応だと思った。


そんなOくんだが先日会社の方からいきなりクビ宣告があった。


その理由は、
「当社はエリート集団を目指しているがそれにそぐわない」
というものだった。


ここで一つ二つ思った。


一つは、トップの人間は今いる開発メンバーがひょっとして全員エリートだと思ってるのかな?

俺は自分がエリートだなんて思ったことはないし、
そんな俺から見ても皆んな大したことない。
※一人を除く


それにエリート集団を目指すのは結構なことだけど個人的には全員エリートってのは如何なものかと思う。


ここでいうエリートってのは精鋭、つまりよくできるヤツのことを指すと思うんだけど、
できるヤツってのは大抵自分の仕事のスタイルを作り上げてしまっている。

そしていちいち他の人がやってることに口を出さない。
それはそいつのやり方があるんだろうと気を使ってる部分もあるし、逆に自分のやり方に口を挟まれたくないからだ。


そしてプライドが高い。

だから結果的にエリート集団となるとまず仕事が他人に投げられなくなる。
それぞれがプライドが高いから簡単に仕事を振れないのだ。

それが故に、下っ端(という言葉もどうかと思うが)、若い子、実力が低い子も現場にはそれなりに必要なのだ。


まあ結局現場にいない人間にとっては実際に効率良く仕事が回っているかどうかよりも対外的な体裁の方が大事なのかも知れない。


あと現時点での実力もさることながら、
その人材を育てる価値があるかどうか、という判断をしたところもあるだろう


要はOくんは会社のそれに引っかからなかったってわけだ。

なんとも急な、そして刻な宣告で正直かわいそうでならなかった。



その後、何度となくOくんとご飯を一緒になることがありその度に、

「俺が上司だったらクビにはしない」

「Oくんができないヤツとは思わない」

とか言ってたのを覚えてる。


高飛車に聞こえるかもしれないがこれでも励ましてた。
そしてこれは本心だった。


自分は、個人を評価するにあたって"実力"だけを見るということはしない。

業務についての知識も必要だし、コミニケーション能力、段取り、セキュリティなどの意識、学ぼうとする姿勢、
これらを踏まえて総合評価を下す。

上記のものが全体的にできている必要はなく、
いずれかの長所があり短所を超えていたらそれで基本的にOKなのだ。

何よりクビにしたら今までの数ヶ月が会社として無駄になる。


新しい人材を探す時間と手間というのは意外とかかる。

そしてそれが仮に運よく見つかったとしても、
また一から教え直すことによる時間の損失を考えると簡単に"クビ"などという結論には中々いかないのだ。


トップは現場がこういう苦労をしていることを知らない。


実際この数ヶ月一緒にOくんと仕事をしてて使えないとは思ってなかったし、ましてクビにしなければならない正当な理由も見当たらなかった。



それからというものOくんは会社の中で積極的に立ち回った。
なんとかクビを回避しようと頑張っていた。

しかしそれが撤回されることもなく時間だけが過ぎて行った…



そしてOくんが辞める日も間近にせまってきたある日、ここで一つ事件が起こった。


Oくんがとんでもないミスを犯した。
※後にOくんとわかった


この会社の全売上の中で9割強の売り上げを叩きだしている、とあるシステムがあるのだが、
このシステムの基幹部分である"基幹フォルダ"をOくんが間違って消してしまったのだ。


このシステムは利用会員が数万人を超えるようなもので、利用している企業も比較的大手の所が多い。
信用問題どころの騒ぎではない。


基幹フォルダが見当たらないことを開発責任者のMさんに報告したら、漫画のように顔色がみるみる青ざめていくのがわかった。


そりゃそうだ。
責任者一人がクビになって責任取れるレベルじゃない。


「ありえない…」

「これは基幹部分で…」

「消したら動くわけ…」

「なんで無くなる?」

うわごとのように呟いてる。


…ダメだコイツ。


Mさんの具体的な指示が何一つないまま現場は混乱に陥った。

ああしようこうしようと現場の人間は必死に知恵を出し合ってる。
だがその検討をする時間もないのだ。

Oくんもここにきて事の重大さに気がついたようで黙ってわたわたしている。


一応基幹フォルダのバックアップはあるのだ。
しかしサーバにアップするだけで数時間はかかるだろう。

しかもいきなりサーバにアップできるわけではない。
バックアップをサーバにアップする"形"に持っていく必要がある。
これだけで数時間はかかる。
※ファイル数が半端ないのでエクスポートするのに時間がかかるのだ


つまりエクスポートに数時間、アップするのに数時間。
早く見積もっても5~6時間はゆうにかかるだろう。

しかもそれをしたとしても正しく動くかどうかはわからない。

しかしもはやどうこう言っていられる状況ではない。

システムは確実に動いていない。
クレームのTELがじゃんじゃん鳴るのは時間の問題だ。


相変わらずMさんはぶつぶつ言ってるだけ。


…もう放置だコイツ。


ファイルを小分けにしてアップを開始し始めたその時だった。


「Xフォルダの中に基幹フォルダがありました!」

Oくんが叫んだ。


そう、Oくんは基幹フォルダを削除をしていたわけではなかったのだ。

Xフォルダの中に基幹フォルダごと間違って"移動"させてしまっていたのだ。


なるほど、道理で基幹フォルダが"いきなり"なくなったんだ。


通常、基幹フォルダを削除するにしてもファイル数が多いため当分の時間がかかるはず。
しかしフォルダ削除に比べてフォルダ移動だと内部的なパスが変わるだけ。
だから処理が早いのだ。

今回基幹フォルダがその存在を隠したのは一瞬だった。
※数分前まで動作していたのだから。


これで納得いく答えがでた。


こうして基幹フォルダをサーバ上で発見したことにより元の場所に移動しなおすことでどうにか最悪の事態は免れた。


Oくんだと断定されたのはその後の自己申告だった。
※申告がなければログから判明してただろうが


そしてこれがOくんのクビを、より確定的なものにしてしまった。


その日からOくんは定時で帰るようになってしまった。


もうどうこうできない…
Oくん自身そう思ったのだろう。




そして最終日、仕事を終えたOくんは皆に最後の挨拶をした。

「今までお世話になりました。」


あれだけのことをやってしまったのだ。

Oくんを庇えるものなんか誰もいなかった。
いや庇おうとするものがいなかった。


開発責任者だったMさんは終始言葉少なだった。


本来ならばこういった時は飲み会の一つでもあるものなのだがそういった話は一切出なかった。


俺は最後にラーメンでも食いに行こうと誘った。
※近場にそれしか店がないのだ


励ます言葉も見つからない。

「次行ってもがんばれよ」
これが精一杯だった。




ここで話は終わる。





…はずなのだが少し続きがある。



ラーメンを食い終わって少し歩いた。


歩きながら今後のこととかを聞いていた。


そしてOくんは今の会社を受ける前にいくつか別の会社を受けていたことを話してくれた。



その中の一つに聞き覚えのある会社名があった。



俺は以前の会社では面接官もしていた。





そう俺は、





なんとOくんを、







面接していたのだ!











そして落としていた。





「俺が上司だったらクビにはしない」

「できないヤツとは思わない」


この言葉が頭の中でリフレインした。
※全て実話